第6話 さくら -後編-










佐伯「サクラだ!」

「桜ですね」

倉橋「桜だね〜」

佐伯「何だお前ら! もっとソウルフルな反応は出来ねえのか!?」

倉橋「ソウルフル……」

「佐伯さんこそ、もうちょっと情緒ってモンを――あ、屋台だ」

佐伯「カキ氷!」

「私イチゴ!」

倉橋「コラコラコラ!
 お弁当があるんだから、屋台に直行しないの、二人とも!」

佐伯「あとで食おうぜ、! 俺、メロン食う!」

「はい。そうなると、倉橋さんは必然的にレモンですね」

倉橋「え、決定事項なの!?」

「そうと決まれば、とりあえず落ち着ける所を探しましょうか」

佐伯「場所あっかなー。もう結構人集まってっしなー」

倉橋「桜見ながら、ボチボチ歩いてこうか〜。奥まで行けば、ちょっとぐらい空いてるよ、きっと」

「見事に満開ですね〜。でも私、散り始めて、葉桜になりかけてる桜も好きなんですよね」

倉橋「分かる分かる。ピンクと緑が、キレイなんだよね」

佐伯「ああ……でも、俺あれ見てると――」

「桜餅が食べたくなるんでしょう」

佐伯「そうそう……って、何で分かるんだよ、お前! すげぇな!」

「アハハ」


??「――さん!!」


「!!」

男1「やっぱりさんだ! さんもお花見?」

男2「今日店行ったらいなかったもんね〜、休みだったんだ?」

「そう、お休みでお花見ーv やっぱり春は、おべんと持ってお花見だよね〜」

佐伯「すっげ。一瞬で違う人間みてえ」

倉橋「お店に行ったきり見てなかったもんね、あのキャラ。久し振りだなー」

男1「お弁当!? お弁当って、もしかしてさんの手作り!?」

「ううん。お花見に行くって話を聞かされたのが、ついさっきで。お弁当はもう完成してたv」

倉橋「サラリとナチュラルに嘘吐いたっ」

男2「そうなんだ〜。もう食べる場所は見つかった? 俺ら、向こうに場所取ってんだけど、よかったら一緒にどう? いつもの奴らもいるよ!」

「ホントにーv また馬鹿騒ぎしてるんでしょ〜」

男2「そうそう、してるしてる。でもさんがいたら、もっと盛り上がるよ!」

男1「うん、きてきて! お願い!」

「も〜、ホントにしょうがないな〜、アハハハハ!」

佐伯「……」

倉橋「……」

「でも残念。この後、お父さん達と合流する事になってるの。今日は親戚一同と親睦会v」

男1「えー? そうなのー? あ、じゃあその人達も親戚の人?」

「ん? あ、お花見、来週だったら私予定空いてるよ? 仕切り直ししてくれるんだったら、お弁当も作ってあげるv」

男2「マジ!? 行く行く! 集合かけとく!」

「じゃ、店長も行けるように、店閉めてからにしよっか。また夜桜になっちゃうけど、いいよね?」

男1&2「うん!!」

「はいはーい、それじゃ、また来週ねv って、どうせまた明日も店に来るんだろうけど! アハハハハ!」




「スミマセン、お待たせしました。行きましょうか」

佐伯「お、戻った。うし、行くか」

倉橋「――よかったの? あの人達と一緒しなくて」

「はい」

佐伯「だろうなあ」

「え?」

佐伯「だってお前、俺達といる方が楽しいだろ?」

「……」

倉橋「凄い。こんなに速くまばたきする人、初めて見た」

佐伯「ん? ちがうのか?」

「あ、いえ……」

佐伯「オラ、行くぞ。あの奥の奥の奥の方で、俺達のおとっつぁんが待ってる!」

倉橋「そうだね〜、なるべくここから離れた所へ行かないと。またさっきの人達と鉢合わせしちゃったら気まずいもんね」

佐伯「だよな。あー、マジ腹へったー。弁当足りっかなー」

倉橋「俺達の分まで食べないでよね。あと、飲み過ぎんなよ」

「――あ、あの!」

佐伯&倉橋「うん?」

「た、楽しいですよ、私、ホントに。ホントの、ホントに」

倉橋「ど、どうしたの、さん。分かってるよ?」

「だって、ちゃんと言わないと……。私、分かりにくいから、いつも、素でいると『つまらなさそう』って、言われてたから……」




関わってく相手全員に、分かってもらう努力しろなんて言わねえけどさ、分かってほしい相手には、必要なんじゃないのか? そういう努力って




「だから……」

佐伯「……」

倉橋「……」

「……だから、あの、」

倉橋「……さん」

「……」

佐伯「……『お前、俺達といる方が楽しいだろ?』」




「――うん、楽しい」




佐伯&倉橋「知ってる」




「……ありがとうございます」

倉橋「ホラ、行くよ。いつまでもにやけてないで」

佐伯「モタモタすんな。おいてくぞ」

「……まあ、本気出せば、私が一番早いんですけどね」

佐伯「あ、てめ、走んな! こっちは弁当崩れるから走れねえんだよ!」

倉橋「ま、まってまって! 俺もお酒とかジュースとか泡立っちゃうから、走れな――ちょっと、さん!」

佐伯「分かってんだぞ、! お前今、思いっきり照れてるだろ!!」

「やかましいですね。無駄口叩いてないで、ちゃっちゃか歩いてください」

佐伯「こんにゃろう! 俺の『萌え』にツンデレ属性は登録されてねえぞ!?」

「誰も貴方とのフラグ立て狙ってませんからご心配なく。それと、私は別にデレていません」

倉橋「いやあ、そうかなあ?」

「デ・レ・て・い・ま・せ・ん」

倉橋「はいはい」




佐伯「ウマイ!!!」

「よかったですね。あ、倉橋さん。その肉団子取ってください」

倉橋「うん。はい、どーぞ。ホントにおいしいね〜。このオムレツ最高。冷めてもこんなにフワフワしてるもんなんだね〜」

佐伯「! そっちのなんだ?」

「これですか? 水菜をベーコンでくるんだ――まあ、食べれば分かりますよ。はい、取り皿貸してください」

佐伯「サンキュー♪ お前も食え! 俺の握り飯を!」

「食べてますよ。さっき頂いたやつは、結局最後の最後まで何の具も出てきませんでしたが」

佐伯「ハズレだな!」

「この野郎」

倉橋「あー、この春巻きもおいし〜。ちゃんと一口サイズなのがまたいいよね〜」

「一口サイズだと、見た目量があるように感じますからね」

倉橋「そういえば、さん。さっき、『来週お花見』って言ってたけど……来週は、もう桜も散っちゃってるんじゃない?」

佐伯「そういやそうだよな。お前が言ったんじゃん。週末は雨だって」

「はい。そうですね」

佐伯&倉橋「……」

「それが、どうかしましたか?」

佐伯&倉橋「いえ、どうも致しません」




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