第12話 てるてる坊主










倉橋「雨が続くねえ」

「梅雨ですからねえ」

倉橋「雨、嫌いじゃないんだけどねえ」

「こうも続くと、さすがに鬱陶しいですねえ」

倉橋「頭にカビでも生えてきそうだねえ」

「もうそろそろ生えてるんじゃないですかねえ」

倉橋「それは大変だねえ」

「大変ですねえ」

佐伯「〜〜そのテンションやめろ、お前ら! 『カビが生えそう』はこっちの台詞だ! うっとうしい!」

倉橋「カズナはこんな天気でも元気だねえ」

「羨ましい限りですねえ」

倉橋「ホントだねえ」

佐伯「やめろってば! シャキッとしろ、シャキッと!」

「カズナ君」

佐伯「なんだよ?」

「ちょっと雨やませてきて」

佐伯「どんな無茶振りだ! 真剣な顔して、アホかお前!」

「あのね、あのね」

佐伯「今度はなんだよ?」

「阿保って言う方が、阿保なんだって」

佐伯「今度は無邪気な顔をした! 横っ面張り倒してやろうか、このヤロウ」

倉橋「ちゃーん、退屈だからってカズナで遊んじゃ駄目だよー」

「はーい。ホント、誰でもいいからやませてくれませんかね」

佐伯「ヒミコでも呼んでこいよ」

倉橋「それって雨を降らす方じゃなかった?」

「というか、卑弥呼ってそんな人でしたっけ?」

倉橋「あ! じゃあ、あれ作ろっか!」

「『あれ』?」

倉橋「てるてる坊主v」

佐伯&「……」

倉橋「え? なに?」

佐伯「二十歳も過ぎた成人男が……」

「雨が降ってるからてるてる坊主って……」

倉橋「な、なに? 駄目?」

佐伯「まあでもあれだ。これがトキヤのいいトコだしな」

「そうですね。私、あそこまで天然で無邪気な顔なんて出来ませんよ」

倉橋「ねー、てるてる坊主ってどうやって作るんだっけ」

「ティッシュ丸めればいいんじゃないですか?」

佐伯「ティッシュ〜ティッシュ〜、あ、ねえぞ。切らしてる」

倉橋「買い置きとかないのかな?」

「てっちゃんがいないから分からないですね。トイレットペーパーでいいんじゃないですか?」

佐伯「ほい、トイレットペーパー」

「これを丸めて〜、丸めて?」

倉橋「丸めてからどうするの?」

佐伯「丸めた部分が頭だろ。この頭を包むみたいにして、服着させりゃいいんじゃねーの?」

「ああ! 紙が細長い所為で、妙に色っぽいスリットが!」

佐伯「アハハハハハ!!」

倉橋「やっぱり四角いのじゃないと上手く作れないのかな〜」

「じゃあ広告で作りましょうか。少し大きくなっちゃいますけど」

佐伯「いいんじゃね? どうせならデカイの作ろうぜ。そっちの方が早くやむかも♪」

倉橋「広告ならいっぱいあるしね。裏が白の広告は、最近少なくなったけど」

「確かに。昔は沢山ありましたもんね。今ではパチンコ屋のぐらいじゃないですか?」

佐伯「お、焼肉屋開店だって。今度行ってみっか〜」

「近くですか?」

佐伯「おう。ここから歩いて行けそう」

「いいですね〜。焼肉大好き」

佐伯「俺も大好きv タン塩〜カルビ〜ホ〜ルモン♪ っと、ほい。一個でーきたっと」

倉橋「雨雨降れ降れ母さんが〜♪」

「てるてる坊主作りながら、その選曲はおかしくないですか?」

佐伯「てるてる坊主の歌ってあったよな。そういや」

倉橋「てるてる坊主〜て〜る坊主〜♪ こ〜こはど〜この細道じゃ〜♪ あれ?」

「何か違いますよ」

佐伯「何かどころの話じゃねえ」

「今のは『通りゃんせ』ですね。確かにちょっと似てますが」

倉橋「あ! あ〜した天気にしておくれ〜♪ だ」

佐伯&「続きは?」

倉橋「……なんだっけ?」

「何でしたっけ?」

佐伯「何かこう……『天気にしてくれないと○○してやるぞ!』みてえな歌詞なんじゃねえの? 流れ的に」

「ああ……『目玉をくりぬくぞ』的な」

倉橋「なんだったっけな〜。てるてる坊主〜て〜る坊主〜♪  あ〜した天気にしておくれ〜♪ してくれないと〜……」

佐伯&「……首根っこ引っこ抜くぞ?」

倉橋「なにその虐殺宣言! 普通に怖いんですけど!」

「こんな時こそ〜、テケテテン」

佐伯「便利ボックス〜」

「てるてる坊主、歌詞、と。あ、あった」

佐伯「あ、ご褒美系。『晴れたら金の鈴あげよ』だってさ」

倉橋「歌詞聞いても、メロディが全く思い出せないなあ」

「三番まであるみたいですね。二番が『甘いお酒もたんと飲ましょ』で、三番が――」

倉橋「三番が?」

佐伯&「『それでも曇って泣いたなら そなたの首をちょん切るぞ』」

倉橋「また出た虐殺宣言!」

「なーんだ。そう見当外れなこと言ってたわけじゃないんですね、私達」

佐伯「なー。そういや、童謡って結構怖いのあるもんな」

「そうですね。トキヤ君が歌った『通りゃんせ』も、『行きはよいよい、帰りは怖い』ですしね。ボッタクリバーかっての」

倉橋「後ろの正面だあれってやつも、何気に怖いよね。そのままホラー映画のタイトルになりそうだもん」

「かごめかごめ、歌詞、……あった。……」

佐伯「……」

倉橋「え? なに? 二人とも、画面占領しないでよ。俺、さっきから何も見えないんだってば」

「さ、てるてる坊主を作りましょう」

佐伯「そうだな。作りましょう」

倉橋「意味は!? 教えてくれないの!?」

「怖い怖い童謡怖い」

佐伯「童謡超怖い超怖い」

倉橋「ぶつぶつ言いながら一心不乱に作らないで! 二人の方が怖いよ!」

佐伯「よし! もう一個でーっきた!」

「私も出来ました。顔描こうっと」

佐伯「『顔描こう』っつって、メガネから描く奴初めて見た」

倉橋「俺も出来たーv ……これ、どうやって吊るそうか? てっさん家、糸とかあるの?」

「あ、私、ソーイングセット持ってますよ」

佐伯&倉橋「ええ!?」

「……持ってるとウケがいいんです」

佐伯「ああ、なるほど……」

倉橋「そういう事なら納得……」

「本当に失礼な人達ですね。はい、どうぞ」

倉橋「ありがとう。これって、……首にくくり付けるの?」

佐伯「それ以外……どうしようもないもんな」

「……てるてる坊主も、何気に怖い」

倉橋「あ、しかも、首にくくり付けると、どうやっても俯き加減に!」

佐伯「うなだれてる! 超うなだれてるよ、てるてる坊主!」

「一休さんのEDでは、あんなに愛らしく見えたのに! なぜ!?」

倉橋「ま、まあ、折角作ったんだし、ぶら下げてみようか」

佐伯「そ、そうだな。よーし、頼んだぞ、てる子!」

「よろしくね〜、てるひさ」

三人「晴れますよ〜に!」




坂田「お前ら! 窓際のあれは何だ!?」

倉橋「あ、おかえりなさい」

「何って、てるてる坊主だけど?」

坂田「外から見ると、4つとも激しく虚ろな目で下を見下ろしてて、恐怖以外の何物でもないぞ!? 下通る人が怯えるだろう! 魔よけかあれは!」

三人「てるてる坊主だってばー」

坂田「何だその無駄に無邪気な顔! しかもトキヤ以外は胡散臭い!」

佐伯&「ひどいこと言ったー!!」




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