第22話 だって









数日後……


(……ドジっ子属性は、なかったはずなんだけどなあ)




(顔は……整ってるよね)

倉橋「……♪」

(で、見た目に反して声が低いんだよね。カズナ君より低いもん)

倉橋「……♪」

(甘い物が好きで、天然ボケ入ってて、苛められっ子体質で……)

倉橋「……ちゃん? さっきからどうかした? 俺の顔、何かついてる?」

「ついてますよ。たっぷりクリームが」

倉橋「うそ! どっち!?」

「トキヤ君から見て右側」

倉橋「ホントだ〜、うわ、はずかし〜」


たまに、手の掛かる子供みたいで――


「美味しい?」

倉橋「おいしいv」

(…………参った)


素直でかわいい





























佐伯「あんまりじゃないですか!」

高森「そうですねえ」

佐伯「素の自分を知ってる相手とは恋愛関係になりたくないとか言っといて……!」

高森「まあ、それ言ったのじゃなくて俺だけどね」

佐伯「は! それがそもそもの間違いだったんじゃ……! お前が見当違いの事言ってただけなんじゃねえの!?」

高森「俺が? の事で?」

佐伯「そうだよ! お前の目が節穴だったんじゃないのかー!? メガネは曇ってませんかー!?」

高森「おわ! 馬鹿! 返せって、コラ!」

佐伯「あれ? あんま度入ってねーのな、これ」

高森「俺、そこまで目悪くねーもん」

佐伯「じゃあ何で掛けてんだ?」

高森「――…」


♪〜♪〜♪


佐伯「あ、メール。トキヤか、ら――」

高森「どうした?」


倉橋【今日はてっさん家寄るの?ちゃんが買ってきてくれたシュークリームがあるよ(*^▽^*)】


佐伯「……」

高森「あー……」

佐伯「あの女……! 自分はそんな甘いモンとか好きじゃねーくせに……!」

高森「100%トキヤの為に買ってったな」

佐伯「これはあれか……的に言えば、トキヤ←のフラグが立ちましたって事か……!」

高森「うーん、鍋した時の感じからは、本人まだ気付いてなかったような気がすんだけどなー」


気付いてたら、もっと上手く隠すし、あいつ


佐伯「っていうか、何あっさり俺らにバレてんだよ……。
    猫かぶったり、ウソ吐いたりすんの、うまいんじゃなかったのかよ……」


高森「……上手いよ。お前が気付いたのは、それだけの事よく見てるからだろ。いつから気付いてたんだ?」

佐伯「んー、なんとなく、なんだけど……あいつ、トキヤの前だと、若干『猫かぶりモード』なんだよな」

高森「へー?」


普通に『違います』って言やいいのに

そうなんですけど、……折角少女漫画のようなシチュエーションなのに、取ってもらう対象がサスペンス映画なのもなあって


あれは、無意識の内に、「女の子」
でいたかったからじゃないだろうか。
可愛い物や、ほのぼの好きなトキヤの前で。


佐伯「納得いかねー。何でトキヤなんだよー」

高森「……俺は、何となく分かるけどな」

佐伯「マジ!? 何で何で!?」

高森「自分で考えなさーい」

佐伯「考えても分かんないから訊いてんじゃんかー」

高森「そんなにうな垂れんなって」

佐伯「だってさ〜……」

高森「……大丈夫だよ。この先、あいつがトキヤに対して行動起こす事なんて、絶対にねーから」

佐伯「なんで?」

高森「言っただろ。本性バレてる相手とは、恋愛しないって」

佐伯「それは、好きになっちゃっても、彼氏彼女にはならないってこと?」

高森「そ。それに、トキヤ、好きな人いるんだろ? 確か、管理人だか何だかの」

佐伯「ああ、大家さんの娘さん」

高森「なら大丈夫だろ。大体、はトキヤの好みじゃねーし」

佐伯「まあ確かに。1ミクロもかすってねーな」

高森「だろー? あ、俺もメール」

佐伯「あ、トキヤに返信しとこ。えーっと、【寄る。冷蔵庫入れと】――」


……あれ?


ふと、隣で携帯を弄るトモを見やり、首を傾げる。

今、何か引っ掛かったような――


高森「わり、カズナ。二軒目付き合うのは無理だわ。っつか、お前、もう帰るだろ? てっさん家に」

佐伯「お、おお。なに? 何か用事出来た?」

高森「うん」

佐伯「彼女?」

高森「まさか」

佐伯「お前、モテるくせに特定の彼女作らねーよなー」

高森「別に作んないんじゃなくて、あっちが彼女になってくんねーんだよ」

佐伯「ウソつけ」

高森「ハハッ」


お前が気付いたのは、それだけの事よく見てるからだろ


ん?


高森「……? カズナ?」

佐伯「いや別に――」

高森「そういやお前、いつまで俺の眼鏡掛けてんだよ」

佐伯「あ、わりぃわりぃ」


お前が気付いたのは――


『お前』が?































――っ!!

俺だけじゃないだろ、気付いたのは!!































佐伯「なん、で」

高森「は?」


掠れたカズナの声に、トモは訝るように眉を寄せた。
しかし、その顔を見て気付く。


佐伯「……さっきの続き。なんで、メガネ掛けてんの?」


トモが、ほんの少し口の端を上げ笑った。


高森「――だって、あいつ眼鏡好きだし」









































































よく知っている筈のその笑顔が、見知らぬ誰かのモノのように見えたのは、
眼鏡を掛けていなかった所為ですか?




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