第20話 鍋 -後編-
一ノ瀬「ああ! トモ先輩! やっと帰ってきた!」
高森「へーへー、お待たせー」
一ノ瀬「ひどいじゃないですか! 僕一人に相手させるだなんてー!」
高森「悪かったって。ホラ、その辺にあるモン、端に寄せろ。おま、鍋に火ぐらいかけとけよ」
一ノ瀬「そんな余裕があったと思いますか!?」
佐伯「マ〜ル〜く〜んv そこの焼酎取って〜んv」
一ノ瀬「駄目ですったら! これ以上飲んだら、お鍋食べられなくなりますよ!?」
「多分、3時頃にはもの凄い勢いでリバースされるでしょうね。鍋の中身」
高森「勿体ねーなあ」
坂田「!」
「な、なあに?」
坂田「お腹が空きました!」
「……そうだね、空いたね」
坂田「白菜、生で食べてもいいか!?」
「いいよ」
一ノ瀬「うわあ! ちゃん! 投げやりになんないで!?」
高森「うし。具入れっぞー。って、トキヤ、もう潰れてんじゃん」
「えええ、って、うわ! ちょ、何でトキヤ君ずぶ濡れなの!?」
佐伯「あー、さっきビール頭からかぶってたよ〜んv 俺も浴びていーい?」
「いいよ!」
一ノ瀬「ちゃーん!?」
「タオルタオル! ああもう、お風呂場行った方が早い! トキヤ君、トキヤ君立てる?」
倉橋「……う〜……」
「ほら、ちょっとここ掴まって……歩けそう?」
坂田「見て! ヨーゼフ! トキヤが立ったー!」
「やかましい!」
高森「おー、オツカレー。トキヤ、大丈夫?」
倉橋「何とか……。風呂場で一回吐いたら楽になった……。ありがとね、ちゃん」
「いーえ。ゴメンね、トモ。鍋、殆どしてもらっちゃって」
高森「いいよ、別に。早く食いたかっただけだし」
「トキヤ君、食べられそう? 野菜がいい? お肉がいい?」
倉橋「……とりあえず……汁が飲みたい」
「はいはい」
高森「ほい、。お前の分」
「え、あ、ありがと。……はい、カズナ君」
高森「こら、お前が食えよ」
「うるさいな。その、こっちの好みを知り尽くしてるくせに、わざと嫌いなモンばっかり入れてくる所がホントに腹立つ」
高森「お前、俺がまだお前の好みなんか覚えてると思ってんの? 自意識過剰でちゅねー」
「あああ、腹立つ!!」
高森「ハハッ」
佐伯「、この肉団子ウマイ!」
「ありがと。あれだけ飲んで、よく食べられるね……」
佐伯「お前が作ったモンだからな! ウマい事知ってるもん! そりゃ食うさ! 食うともさ!」
「わか、分かったら、ちょ、食べながら喋らないでっ!」
一ノ瀬「この肉団子、作ったやつなんだ〜。マジでうまいね」
「ありがとう、いっぱい食べて。トモは? もう食べた?」
高森「うん、食った」
「……美味しかった?」
高森「……? うん」
「……♪」
高森「……? ――っ!! 何入れた!?」
「すり下ろしたレンコーンv」
高森「俺に野菜を食わすなー!」
倉橋「ちゃん、俺にも肉団子」
「レンコン平気?」
倉橋「うん」
坂田「、、お酌してv」
「まだ飲むの!?」
一ノ瀬「てっさん先輩、そろそろやめといた方が……」
坂田「なにぃ!? そんな事言うのは、この口か!? この口かー!? ネギ入れっぞー!?」
一ノ瀬「ふごがー! せめて口に入れてくださいよ! そこは鼻! 鼻!!」
「そのネギ、鍋に入れたら許さないからね」
高森「キミのことミックミックにし〜てやんよ〜っと。そういや、モンハンやり出したんだって?」
一ノ瀬「え、ホントに!? ゲームとかすんの!?」
「う……うん」
一ノ瀬「俺もやってるよ〜、モンハン。面白いよね」
佐伯「メチャクチャ下手だけどな!」
一ノ瀬「そりゃ女の子なんですから……」
佐伯「女の子〜? へビィボウガン連射して、一切避けねえでそのままぶっ飛ばされるような奴が〜?」
坂田「双剣使ってる時は、鬼人化したまま突っ走って、そのままぶっ倒れてたな」
一ノ瀬「な、何て男らしい……」
「や〜め〜て〜! もう! 大人しく鍋食べてなよ!!」
高森「、お前もしっかり食わねえとなくなるぞ、肉」
倉橋「そういうお前は肉ばっかり食い過ぎだぞ、トモ……」
佐伯「あー、食った食ったー」
倉橋「もう……無理……」
高森「あ、ついにトキヤが落ちた」
一ノ瀬「てっさん先輩もですよ。さっきから僕の横で高いびきです」
「それじゃ片付けよっか〜。あ、一応訊くけど、雑炊にして食べたいって人、いますか?」
3人「無理です」
「ですよね〜。じゃあ、明日の朝ごはんって事で。トモ、洗い物運んで。私洗うから」
高森「了解。カズナとマルは、こっちの部屋よろしくな。コンロとか、片しといて。最低でも寝られるようにしとけよ」
一ノ瀬「え、ちゃんもここで寝るの?」
3人「……」
一ノ瀬「え!? ちゃんもここで寝るの!?」
佐伯「二回も言った!」
一ノ瀬「大事な事だったので!!」
高森「いや、まあ……泊まってくつもりだろ? 」
「そ、そうだね……。当たり前のように、泊まってくつもりでいたね……」
佐伯「もう終電もねーだろー、こんな時間じゃー」
一ノ瀬「おおお、女の子ですよ!? こんな、野郎ばっかの部屋に、何普通にお泊まりさせようとしてるんですか!!」
佐伯「おおお、お泊まりって言うな! 何かムダにときめくだろ!?」
一ノ瀬「ときめいてる場合ですか! だ、だ、だ、駄目でしょ、ちゃん! もっと自分を大事にしなきゃ!」
「ご、ごめんなさい」
佐伯「何か……今更だけど、もっともなツッコミだなあ」
高森「ハハハ、お前ら常識ねーなあ」
佐伯「お前だって、彼女でもねえ女の子の家に泊まったりしてんじゃん! 知ってんだぞ!」
高森「俺は下心アリアリでお泊まりしてます」
一ノ瀬「いばる事じゃありませんよ!?」
「私、洗い物してきていい?」
高森「ああ、俺もすぐ行くから」
一ノ瀬「話はまだ終わってませんけどー!?」
高森「マル」
一ノ瀬「は、はい? いや、僕だって別にちゃんがいるのがやだって言ってるんじゃなくて――」
高森「あれ、俺の」
一ノ瀬「一般常識としてですね――はい?」
高森「だから、俺の。は俺の隣で寝るから、何の問題もなし」
一ノ瀬「え、は、は!?」
高森「俺らの間での絶対のルールは?」
一ノ瀬「上の言う事には絶対服従……」
高森「その『上』のモンに手ぇ出したりしないだろ? マル君はv」
一ノ瀬「誰がそんな話をしてましたか!?」
高森「ああそうなの? 『僕の理性が保ちません』って心配をしてんのかと思った。じゃあ何が問題?」
一ノ瀬「ほほほ、他の人の理性はどうすんですか! ってか、トモ先輩の理性も心配ですよ!」
高森「大丈夫。俺、気付かれないようにすんの巧いから」
一ノ瀬「下品!!!」
高森「他の奴らだって、こんだけ飲んでりゃ無理だろ〜。ってな訳で、解決でーす。とっととお部屋を片付けてくださーい」
一ノ瀬「逆らっても無駄なんですね……無駄なんでしょうね……」
高森「そうですね」
一ノ瀬「分かりましたよ……。あ、先にトイレ行ってきます」
高森「あいよーって、いっっって!!」
佐伯「ト〜モ〜く〜ん?」
高森「カズナ、おま、今結構マジで蹴っただろ……!?」
佐伯「誰が誰のだって……!? 誰が誰の……!?」
高森「あー、あれだよ、あれ。嘘も方便。ああでも言わなきゃ、話長くなんじゃん。俺は眠いんだっつーの」
佐伯「だからってなあ!」
高森「っていうかお前、俺に妬いてる場合じゃねぇと思うんだけど」
佐伯「――っ」
高森「あれ? 何だ、自覚あんのか。そんじゃ、俺、皿持ってくから。この部屋よろしく〜」
「――あ、ありがと。マル君、どうなった?」
高森「ん? 話したら納得してくれたv」
「また『先輩の言う事は〜』とか言って脅したんでしょう」
高森「ハハッ」
「もう……」
高森「初対面の感想は?」
「マル君?」
高森「うん」
「…………眼鏡をかけ忘れた新八」
高森「アハハハハッ!!」
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