第1話 出会い
佐伯「ちーっす。テツガク先輩、言われた通り、酒とつまみ買ってきましたよー」
倉橋「お邪魔しまーす。買ってきましたよー。ワインと焼酎とビールとチュウハイと烏龍茶」
佐伯「あと、板チョコとポッキーとファミマの柿の種。
柿ピーなんてどこのやつでも一緒じゃないっすか。買う店まで指定しないでください、……よ?」
坂田「ふっふーん、ご苦労キミ達。さあ、その買い物袋をささっとこちらに渡しなさい!」
倉橋「えと、あの、テツガク先輩?」
坂田「ん? なんだ? ああ、このか〜きのたね〜はお前のだったな。ほら、」
「ありがと」
坂田「しかしだな、お前は全くもって分かってないな! 柿ピーとは柿の種とピーナッツとが絶妙なハーモニーを醸し出してこそのおつまみだろう。
それを単独で食そうとするとは、愚の骨頂だぞ。ああ情けない」
「そんな女々しい食べ方はてっちゃん一人でやってれば」
坂田「ま〜小憎たらしい! このわたくしのどこが女々しいっていうのかしら! 言って御覧なさい! さあ! さあ!」
「あ、てっちゃん。私の烏龍は?」
坂田「ああ、まてまて……これだ。――ほら、二人にお礼言って」
「ありがとうございます。ええと……」
佐伯「あ、佐伯カズナです」
倉橋「倉橋トキヤ……です」
「ありがとうございます。佐伯さん、倉橋さん」
佐伯&倉橋「どういたしまして――って、ちょっと待って!!」
坂田「な、なんだYOU達、いきなりBIGな声を出して!」
佐伯「だ、だ、だ、誰ですか、その女の子! ってか、テツガク先輩の家に女の子! これほどミスマッチな組み合わせがあろうとは!」
倉橋「そうですよ違和感ありまくりですよ! 俺、最初幻覚かと思った!」
坂田「何気に……いや、ハッキリキッパリ失礼だな君達……」
佐伯「まさかまさかまさか、彼女……ですか!? 彼女だったりするんですか!?」
「ハッキリキッパリスッキリシャッキリ失礼だわ。私のどこに三国志的要素があるっていうの」
坂田「ハッハッハ、いいだろう。羨ましいだろう」
倉橋「じゃあ、やっぱり!?」
坂田「ああ、彼女は俺の――攻略本だ」
佐伯&倉橋「……………………は?」
坂田「凄いんだぞ〜。乙女ゲームと名のつく物は、全て網羅し、その攻略法がこの小さな頭に叩き込んであるんだ。どうだ、素晴らしいだろう。やらんぞ」
佐伯「いや、いりませんよ!!」
坂田「なにぃ! お前は彼女の素晴らしさ、そして希少価値加減を全然理解していないな!? 今現在、いくつの乙女ゲームがこの世にはびこっていると思ってるんだ?
その全て、その全てをだぞ、アルバレアの乙女から、乙女的恋革命★ラブレボ!!(DS版)まで把握してるって事が、どれだけ凄い事なのか――」
佐伯「だから、俺はその乙女ゲームってやつをプレイしないんですってば! この間のファンタジーフォーエバーでいっぱいいっぱいだったんですから!」
坂田「ファンタスティックフォーチューンだっっ!!」
倉橋「えーっと……」
「ああなったら止まりませんね。少なくともてっちゃんの方は」
倉橋「カズナも、熱くなると引くに引けないタイプだからなあ」
「……」
倉橋「……」
「……」
倉橋「……あの」
「はい?」
倉橋「さっきはゴメンね。その、カズナが」
「? 何がですか?」
倉橋「『いりません』なんて、言われたら嫌な気分だよね。何とも思ってない相手からでも」
「そうですね。いい気分には……なりませんね」
倉橋「ゴメンね。後で、ちゃんと本人にも謝らせるから」
「……」
倉橋「……」
「……私、です」
倉橋「え?」
「ごめんなさい。自己紹介、してもらったのに、私は言ってなかったなって」
倉橋「ああ、いや、そんな。……ええと、さん?」
「はい、よろしくお願いしますね。倉橋さん」
坂田「おお、珍しいな。がキチンと交友関係を築こうとしている」
佐伯「は? 何すか、それ」
坂田「いやー、なかなか人見知りの激しい奴でな。慣れた人間の前じゃないと、必要以上に猫かぶろうとするんだよ、あいつ」
佐伯「はあ?」
坂田「だから、ちゃんとした友達って奴が出来なくてなー。んで、今回お前ら二人をあてがってみようかと思ったわけだ」
佐伯「あてがうって……犬や猫の嫁さん探しじゃあるまいし……」
坂田「嫁ぇ!? カズナ、お前、に妙な気なんぞ起こしてみろ! 青龍円月刀で切り裂くぞ!?」
佐伯「ぎゃあ! てっさん家、何でそんな物騒なモン置いてるんすか!? ってか、物の例えっす、例え!!」
坂田「がKO・I・☆なんてものにうつつを抜かしたら、わざわざ二次元で男落とそうなんて気にならなくなるだろ! あいつは、俺の攻略本は、――俺が守る!!」
「……てっちゃん」
坂田「ん、なんだ、」
佐伯「た、助かった……」
「てっちゃんのチョコ、半分食べてもいい?」
坂田「ああ、いいぞ。半分でいいのか?」
「うん。じゃあ、はい。この半分、私の分だから、冷凍庫で凍らしてきて。パリパリのが食べたい」
坂田「分かった。ほら、そっちのゴミも貸せ。捨ててくるから」
「……では」
佐伯「は? ……え、なに、俺?」
「佐伯さん、でしたっけ? 始めましょうか?」
佐伯「え? は? 何を?」
「パレドゥレーヌ」
佐伯「マドレーヌ?」
「PS2版にしましょう。メガネの出番がダントツで増えてるんですよ」
佐伯「うっわー、超華麗にスルーされたよ……」
倉橋「そんな目で俺を見るな。助けてなんかやらん。というか、ムリだ」
「若干滑舌が心配になる鈴木達央が満載です。攻略キャラもツンデレ爺さんからおデブちゃんまで。総勢35名」
佐伯「35!?」
「幸い、三連休ですしね。何とかなると思います」
佐伯「あ、あの〜」
「今夜は寝かせませんよ。ついでに、明日も明後日も」
倉橋「……カズナ、いいからお前、早く謝っとけ、彼女に」
佐伯「だーっ! チクショウ! ヴィンフリートの最後のイベントが埋まらねーっ!」
坂田「はい、やり直しー。まったく、いい加減諦めてに攻略法を聞いたらどうだ?」
佐伯「ぜってーやだ!! ――見てろよ、お前! 絶対自力で全クリして、ギャフンと言わせてやるからな!」
「それぐらいいくらでも言ってさしあげますよ。『ギャフン』『ギャフン』、もう一つおまけにほ〜ら『ギャッフ〜ン』」
坂田「おお、こどちゃの羽山君ネタだな。懐かしい」
佐伯「あああああ、ムカツク!!!」
倉橋「……さん」
「はい?」
倉橋「ちなみに、あのイベント、どうやったら見られるの?」
「7人の主要騎士、アストラッドやディトリッシュですね。7人の主要騎士を全員雇っている状態で、誓約の儀式前までいくと見られます」
倉橋「それは……カズナにはムリだなあ。ハハッ」
「そうですね。基本的に、狙った人物以外には目もくれないみたいですもんね。あの人。フフッ」
倉橋「はぁ〜。……カ〜ズナ〜、やっぱりお前、素直に謝った方がいいかもだぞ〜」
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