緑=佐伯
青=倉橋
赤=ヒロイン

【ゲーム篇】


「はい、今回は『ソウルクレイドル 世界を喰らうもの』です」

「あれ? 乙女ゲームじゃないの?」

「お察しの通り、超能力者です」

「はあ!?」

「冗談です。
お察しの通り、違います。
ジャンルはシミュレーションRPGですね」


「愛しのたつ君はどんな役?」

「熱血で正義感が強くて一人で突っ走るシスコンバカです」

「……そんだけ? お前、このゲームの鈴木達央、
めちゃくちゃ好きだっつってたよな」


「確かに、それだけだとツボにハマりそうにないよね」

「最初にゲームの説明をさせてください。こきおろしますよ」

「目がマジだ」

「力の限りにつまらないです。
RPGなのにキャラを育てる楽しみがありません。
ずっと使ってきたキャラより、
金出して買ったキャラの方が強いです」


「そりゃキャラに思い入れもねえよなあ」

「二回目以降は前回のレベルごと引き継げるので、
戦闘は楽になります。
ですが、どれだけ強くても一回の戦闘に掛かる時間が長過ぎる!
いくら相手を一撃で倒せるだけの力を持っていても、
攻撃が届く場所までチマチマ歩かなくてはならず、
これがひたすらに面倒くさい」


「シミュレーションRPGってそういうモンだろうがよ」

「戦闘を楽しむ為には、
やっぱりキャラ育成の楽しみがあってこそだと思うんですよね。
お気に入りのキャラのレベルをひたすらに上げてみたり、
必殺技発動時の声が聞きたくて無駄に雑魚キャラぶっ飛ばしてみたり」


「使えばいいじゃない、必殺技」

「ED狙ってるキャラのしか使えないんですよ」

「どういうこと?」

「主人公とそのキャラが二人で行う必殺技、
まあ連携技なんですけどね。
その連携技で、
どれだけ敵を倒したかでEDを迎えられる相手が決まってしまうんです。

だから、あまり他のキャラとは控えなくちゃいけなくて。
もちろん、単体技は聞きまくりましたが。
このED条件が、また二週目からは厄介な条件でねえ」


「ああ、レベル引き継いでんだから、強いもんな。
連携技発動する前に、敵がいなくなんだろ?」

「さすが。
乙女ゲームでなくなると強いですね。その通りです。
通常攻撃の後に必殺技発動ですからね。
二週目ともなると、通常攻撃のみで結構な破壊力で」


「あらまあ」

「倉橋さん。
そんなにそこの苺大福が気になるなら、私の分も差し上げますから、
力いっぱいに気のない相槌をやめてもらえませんか」


「ちが!
ごめ――
でもいただきます」

「トキヤ、こういうゲーム苦手だもんなあ」

「……幸せそうに大福食べてる顔見てたら、
何だかどうでもよくなってきました」


「まあつまりは、ゲームの出来としてはハマれなかった、と」

「その一言に尽きますね。ですが」

「さあ来るぞー」

「鈴木達央は最高です。
ネタバレになるので詳しくは言えないのですが、
終盤の達央はおいしい! 
ビバ!」

「今時『ビバ』はねえよなあ」

『ネタバレになるから言えない』で、
どういう位置づけのキャラなのかを察してください。
後半の化けっぷりが最高です。
エロくもなく、セクシーでもなく、
ただただ『いやらしい』喋り方で飛ばしてます達央」

「飛ばしてるのはお前もだけどな。
けど、『レビン』としてじゃなくて、
『レビン』を演じてる『鈴木達央』がよかったんだろ?」


「はい。
このゲーム、キャラもシステムもストーリーも何もかもが残念な出来だったんで。
設定はいいんだ、設定は。
でもその設定が活かされていない
薄っぺらいストーリーにやる気が失せる!」


「トキヤー、大福、俺の分も取ってー」

「レビン以外では、
ドリーシュとシェマの絡みに随時萌えていました。
あの二人はよかったなあ。
シェマのツンデレっぷりに笑いました」


「サンキュー。
お、ウマイなこれ」


「ねー。もっと買ってくればよかったね。ごちそうさま」

「おま、もう全部食ったのかよ!?」

「それぞれのキャラEDもいまいちですしねえ。
せっかく男主人公と女主人公がいるのに、
EDの内容が変わらないキャラがいるなんて、
何を考えてるんでしょうか製作者。何も考えてないんでしょうか製作者」


「なかなか終わらないねえ」

「だねえ」

「散々こきおろしましたが、
たつ君の新しい魅力が見出せたゲームです。
お財布に余裕があり過ぎてお困りの方は――そんな方は私にください」


「ぅおい!」

「コホン。
ご購入を検討されてみてはいかがでしょうか」


「あ、終わった」

「おつかれさん。
オラ、口開けろ。――あーん」


「あーん。
――これ、佐伯さんの分じゃないんですか?」


「ゴメンね。俺、本当に全部食べちゃって」

「構いませんよ。私が言ったんですし。
佐伯さんも、ありがとうございます」


「ウマい?」

「はい、おいしいです。
『これでもか!』ってぐらいにまくし立てた後なので、
大分口がパッサパサですが」


「うん、だと思った」


「……」

「やめて! 炊飯器を振りかぶるのはやめて!
この位置だと先に俺に当たるから!!」








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